連載 医療と社会 ブックガイド・8
『助産婦の戦後』とその後―大林道子の本
立岩 真也
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1信州大学医療技術短期大学部
pp.704-705
発行日 2001年8月25日
Published Date 2001/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902577
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出産・助産というテーマについても,もちろんたくさんの本があるのだが,やはり大林道子の本をとりあげなくてはならない.『助産婦の戦後』は重要な本である.論争を喚起する性格ももつこの本への批判があったのか,もっと詳しく調べられ,否定されている部分があるのか.あったと聞いたことはないが,私はこの領域の研究の蓄積について知らないから確かではない,ただ,あったとしても,この本が1989年に出され,今ここにあることの意味は大きい.
他の著書の記載などにもよると,大林は1959年に東京女子大学文学部社会学科を卒業.出版社に勤務.職場での性差別,とくに意識の中の差別に出合う.女性解放運動の先進地の一つ米国で勉強しようと,1976年から1979年まで米国に滞在し,カリフォルニア州立大学サクラメント校の大学院で社会学を専攻しつつ,女性学のクラスをいくつか聴講,その一っが「Mother/Woman/Person」と題された講義だった.その中で,米国の出産・助産の歴史が扱われ,教師に日本の助産,助産婦について問いかけられたが,その問いにきちんと答えられず,帰国して調査にかかる.
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