特集 21世紀の看護教育へ向けて
学生とともにつくる臨地実習教育―経験型実習教育の考え方と実際
安酸 史子
1
1岡山大学医学部保健学科
pp.814-825
発行日 2000年11月25日
Published Date 2000/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902366
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経験型実習教育を支える理論
ケアリングと教育
80年代に,米国で起こった看護教育界のカリキュラム革命において,行動主義モデルからケアリングを中心に置いた教育へのシフトが提唱された.『ケアリングカリキュラム』1)は,米国のカリキュラム革命の中心的な役割を果たした本であり,ケアリングを中心にしたカリキュラムとはどういうものかということを,行動主義モデルの批判から入って具体的に論述してある.行動主義モデルを適用した伝統的な教授法は権威的で,家父長的な“縦の関係”で教えるやり方であるのに対し,ケアリングカリキュラムの場合は教師と学生間の関係が同等,対等の態度で展開する.環境は,抑圧的な環境ではなく解放的な環境で,討議というのは論争ではなく,対話を中心とした討議が展開される.教育目標は,伝統的な教授法では行動目標を設定し,目標を達成するために具体的に,訓練的に実際にされていくが,ケアリングカリキュラムの場合は学習者参加型の教育で,その目標も一般目標までの提示であり,行動目標は示されない.
ケアリングを組み込む教育には,教師と学生のあいだに癒しの機能を蘇らせることが必要である.このことは,教科内容そのものがケアリングでなくても,教育方法の中にケアリング機能を組み込む必要があるという提言であるが,看護教育においては,ケアリングは非常に重要な教科内容でもあるので,なおさら教育方法にケアリングを取り入れる必要があると考えている.
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