看護基礎教育改革への助走 看護技術の視点から基礎教育を見直す
第3部 改革を迫る今日の状況
医療経済と看護:コストと質―アメリカの最新の動きから,そして看護教育へ
近藤 房恵
1
1Holy Names College
pp.974-984
発行日 1997年11月30日
Published Date 1997/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901732
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はじめに
つい最近,日本からの看護学生と看護教員を,私の住むカリフォルニア州の病院見学に案内したが,そこで日本人が一番驚くのは,アメリカの病院での入院期間の短さである.ある急性期の病院で,平均入院期間が3日,乳房の全摘出術は当日手術で,患者は入院せずにその日のうちに退院する.この入院期間短縮の現状は,高騰する医療費の問題に対する対策として起こってきた医療制度改革の結果である.ここ数年,アメリカの医療サービスは目まぐるしい変化を体験してきているが,これらの変化は,すべてこの医療経済の変化の影響を蒙っているといっても過言ではない.
アメリカの医療費の問題が討議される時には,日本は国民皆保険を施行しているし,医療費の国民総生産比もアメリカと比較すると段違いに低いから,日本ではあまり参考にはならないだろうと思っていた.しかし日本でも近年,増加する老年人日の問題等により,医療費の高騰が問題となり,診療報酬制度の改訂等の対策が講じられつつある.1998年度予算では,医療保険制度の財政悪化を解消するために,厚生省は医療費の総額抑制と患者負担を増加する改革案を提示した.この改革案の中には,アメリカのDRG(疾患別グループ)方式に似た,疾患別による診療報酬の「定額払い」の採用を含めている.
このような日本の現状を鑑みて,アメリカで生じた医療制度改革の変遷とそれに伴う医療サービスや看護への影響を紹介することは,今後の日本の看護にとって参考になるばかりでなく,次代を担う看護婦・士を育てる教育のあり方を考えるのに避けて通れない問題を投げかけると考える.
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