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「3年間で看護学士取得:革新的な教育課程」
Institute of Medicine(2011)の報告によると,現在アメリカには300万人以上の正看護師がいます。しかし,アメリカでは看護師不足の状態であり,看護師の需要は年々高まっています。2012年では271万人の看護師が必要とされていましたが,10年後の2022年には約53万人増員して合計324万人の看護師が必要となると予測されています。全体で19%の看護師増員が必要となるため,効果的に看護師を増やす方法が必要となっています。アメリカでは第二次大戦後にも看護師不足の状況が続いていたため1952年,2年間で正看護師の資格を取れる課程がつくられました。現在新卒看護師の約50%がこの2年間課程を卒業した人々です。しかし,時代の変化に伴い質の高い看護ケアを必要とされてきており,多くの病院で看護学士号をもつ正看護師を採用する傾向にあります。実際に数々の研究で看護学士をもった正看護師のほうがよい患者ケアができると述べられており,Institute of Medicineは2020年までに80%の正看護師が学士号をもつことを掲げています。現在アメリカには看護学士を取得するための方法が3つあります。1つ目は4年制の看護学部に入学する,2つ目は2年間で正看護師資格を取得した人が4年制の看護学士課程に編入する,3つ目は看護以外の専攻で学士号をもっている人が看護学部に編入する方法です。
Ferrantoは看護師不足を打開するための策として,上記以外の方法で看護学士を効率的に取得する方法として3年間で看護学士を取得できる課程について述べています。アメリカでは基本的に9〜12月の秋セメスターと1〜4月の春セメスターに授業をとります。そのため,夏の間は授業がありません。筆者はこの夏休みの間に授業を行うことで通常4年間で取得できる看護学士号を3年間で取得できるような課程を推奨しています。夏休みに授業を取ることで,生徒は1年間早く卒業できるため時間とお金をセーブすることができます。また,通常夏の間は使われていない学校の施設を夏の間に使用できることもFerrantoの推奨するプログラムの利点です。さらに,夏の間に時間がある教員を採用して授業を行うことで教員の雇用率を上げることができます。その他にも,3年間で学士課程を取得できるプログラムに入った学生の卒業率は98.4%であり,4年制大学の卒業率81.5%よりも卒業率が高いことが述べられています。また,NCLEX-RN(看護師試験)を1回目でパスする率は過去5年間で4年制大学卒業生の合格率が93%であるのに対し3年間課程の卒業生の合格率は98.33%であり,この数値はアメリカの平均合格率88.01%と比較しても高いことが伺えます。ただ,著者は,3年間で看護学士を取得できる課程に入学するための審査が他の課程に入学するよりも厳しく,入学時点で他の学生よりも学業で優れているのでNCLEX-RN合格率が高くなっている可能性があり,3年間課程のプログラムだけがNCLEX-RNの合格率に関係しているとは言い難いことや,3年間課程に入学している学生の数が少ないためより多くのサンプル数が必要であることも述べています。Ferrantoは,学生の多様性に柔軟に対応するためのプログラムの1つとして3年間課程の利便性を述べています。
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