連載 癒しの環境・9
施設症
高柳 和江
1
,
クミコ・クリストフ
1日本医科大学(医療管理学教室)
pp.764-767
発行日 1995年9月25日
Published Date 1995/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901191
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『脱病院社会』という非常にユニークな本を書いて,医療を痛烈に批判した人がいる.本人は医者ではないが,医療について非常によく勉強していて詳しい.そのイヴァン・イリッチによると1)医療の介入が最低限しか行なわれない世界が,健康に最も良い状態で,広く行き渡っている世界であるという.健康な人々とは,健康な家に住み,健康な食事を食べる人々である.彼らは,官僚的な干渉を必要としない文化によって支えられている.ちなみに彼は『脱学校の社会』も書いている.
1995年の厚生白書によると2),国民の健康に対する意識は,健康と考えているもの,まあまあ健康と考えているもの,病気と考えているものが3分の1ずつである.病状を抱えているもの,病院に通院しているが,日常生活に差し支えのないものを健康と考えると,健康という意識はもっと高まっていると考えられる.実際,日本の社会的入院患者と,病院に通院しているが,日常生活に差し支えのない半病人との境ははっきりしていないように思う.病院に入院していたら1日中病人であり,外来通院でも在宅であれば健康だという意識があると理解するのだろうか.
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