連載 癒しの環境・6
フルタイムの患者からパートタイムの患者へ
高柳 和江
1
,
クミコ・クリストフ
1日本医科大学(医療管理学教室)
pp.472-475
発行日 1995年6月25日
Published Date 1995/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901126
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病気の人は病院の中にはいった途端,患者と呼ばれる.外来患者は,待合い室にいる間中,診察中,薬局の前で,患者をする.入院患者は,入院の間中患者の役目をする.患者は,「我慢するヒト」であるから,生活すべてを強要され,突然,幼稚園児扱いされる.大の大人が,夕方5時から,落としても割れないプラスチック容器のどんぶり飯を食べ,9時に寝ることを強要される.娘のような看護婦に,「おじいちゃん」と,なれなれしく呼ばれる.かとおもえば,放射線の技師に,「あっちむいて」「こっちむいて,ほらほら,そっちじゃない」と,怒鳴られる.何を聞いても,とりつく島のない返事をされる.「医者のわしがここが悪いといってるんだから,ここが悪いんだ.黙って聞け」頭ごなしの言葉をかけられることもある.
でも,待って.社会では,立派な大人.通勤電車では,エッチな週刊誌を愛読しているかも知れないが,会社では,おしもおされぬ部長であったりする.病院という一風変わったところとはいえ,れっきとした昼間の大人社会なのである.入院したからといって,20,30の若造にじゃけんに扱われ,おじいちゃんよばわりをされることはない.しかし,一旦入院すると病院という一種独特の雰囲気にのまれてしまっているのだ.
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