特集 看護と福祉新時代―教育に期待されるもの
社会福祉施設の中での看護職の役割
看護が自立し,社会的に認められるために
福与 富美子
1
1ナーシングホームあしたばホーム
pp.103-105
発行日 1995年2月25日
Published Date 1995/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901050
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私が看護学校を卒業した1956(昭和31)年は,地方ではやっと医師の支配下から看護部が独立し,医療の高度化,治療内容の積極的変換が行なわれつつある時期でした.それに伴い,看護婦の労働条件は過酷となり,月に20日間は休みなし,夜勤連続1週間,月に20日の夜勤,ベッドサイドでの医療介助と看護業務の中で直接看護をいかに多くするかと思いつつも,手が足りない,時間がない,看護用品がない,「ないないづくめ」の中で,先輩婦長は空論女史などとニックネームをつけられていました.理想と現実の間で先輩や同僚は次々と新天地と青い鳥を求めて去って行きました.
時は流れ,科学の進歩と共に病院のあり方も,患者のニードも多様化した今日,相変わらず臨床で働く看護婦は試行錯誤をくり返しているように思います.ナースステーションを出る時は盛り沢山の仕事をかかえ,患者の訴えを聞く姿勢は,頭のすみには看護の良心をおきつつも,顔は後を振り返り,足は次の患者のために歩き出しているようにみえます.看護の本質からかけ離れ,科学の進歩に追われ,環境を調整することが軽視され,機械に取り囲まれた患者とミニドクター化されたナースがそこにあります.医療事故を未然に防ぐことと,行き届かぬ面はないかと奔走しながら,婦長として看護婦の意識の違いにとまどう日々.
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