Japanese
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特集 社会リハビリテーションの新しい動き
自立生活(IL)運動と社会リハビリテーション
Movement of Independent Living and Social Rehabilitation.
定藤 丈弘
1
Takehiro Sadato
1
1大阪府立大学社会福祉学部
1Faculty of Social Welfare, University of Osaka Prefecture
キーワード:
自立生活運動
,
社会リハビリテーション
Keyword:
自立生活運動
,
社会リハビリテーション
pp.507-511
発行日 1990年7月10日
Published Date 1990/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106301
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はじめに
本稿では,社会リハビリテーションの進展において自立生活(IL)運動,特に米国のIL運動が果たした意義,役割を中心に論じたい.ILの思想や運動はかなり紹介され,わが国の障害者の生活や運動にも一定のインパクトを与えているとはいえ,その意義の重要性のわりには,社会リハビリテーションの領域では大きな位置を占めているようには思われないからである.ILは社会リハビリテーションの原動力の一つとなるという視点から,この意義や課題などを再考したいと思う.
1970年代になって活動を開始したIL運動の最も一般的な意義はいうまでもなく,それまでリハビリテーション界で支配的であった障害者の自立観とは著しく異なった.そして最も体系的な自立論を構築したことである.すなわち,経済効率主義の立場から経済的自活と日常生活動作の自立を重視してきたこれまでの自立観にも影響されて,身辺処理に介助の必要な重度障害者は自立困難な存在として取り扱われ,隔離的,被保護的な生活を余儀なくされてきたが,IL運動やその影響下にある米国のリハビリテーション法(特に1978年のリハビリテーション法第7章)の理念は,従来のリハビリテーションの考え方とは異なり,“労働市場への参入の見通しや身体的機能の回復の見通しとはかかわりなく,障害者の自己実現への要求の充足を支えること”を目標とし,したがって“これまで自立困難とされてきた”重度障害者をその主なる対象として含み得るような体系的な自立概念の構築に寄与したのである.
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