一頁講座 社会リハビリテーション・7
障害者の社会自立
西村 秀夫
1
1北海道リハビリー
pp.783
発行日 1982年8月10日
Published Date 1982/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104806
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1.わが国では最近まで,障害者の社会自立とは障害をのりこえて職業につき,他人の世話にならずに生活することができるようになることと考えられていた.この意味での自立を更生(生きかえる)ともいう.これは障害者を不具,廃人と呼んできた考え方と共通な根底を持っている.それは物の豊かさを求め生産性を第一としてきた価値観である.もう一つ基盤にあるのは家族の世話になるのが当然であって「他人様」や「世間」の世話になるのは悪であるという「イエ」中心の考え方である.
2.これに対.して「更生」の困難な障害者の中から「イエ」に閉じこめられるのではなく,それに代った収容施設に保護されるのでもなく,地域社会の中に住み,自力を最大限に発揮して働きつつ,ハンディをカバーする年金を受けて生活することを求める動きが出てきている.さらに,日常生活動作の自立も極めて困難な障害者のなかから,施設に収容されるのではなく,心要最少限の介助を受けつつ自分の住居に住み,自分で考え,自分できめ,自分で行動する「ケアつき自立」の生活を求める動きが出てきている.「ケアつき自立」の思想は旧来の「イエ」中心,「生産性第一」の思想をこえて,物の豊かさによらぬ価値の実現を求めているという点で,現代社会の根本課題にかかわっている.
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