特集 看護と福祉新時代―教育に期待されるもの
今こそ,能動的な看護を―必要とされる看護のシステム変化
井上 悦子
1
1佐賀医科大学医学部看護学科
pp.106-110
発行日 1995年2月25日
Published Date 1995/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901051
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某新聞に掲載された「看護労働共同調査」によると,「人生をやり直せるなら看護職を選びますか」の質問に189人(37%)が否定,179人(35%)が回答保留をし,「再び看護職を選ぶ」と答えたのは26%.約6割が「仕事に余裕がない」「過重な労働が続く」などのストレスを感じ,「心身の疲れが回復せずにつらい」と思う人が67%であり,どんな時に働きがいを感じるかについては「患者やその家族に評価された時」が77%.神奈川県の29病院785人の看護婦を対象に行なわれ,515人(65%)から回答を得たこの調査は,看護労働のきびしさと看護職の思いやり,社会的行動志向を裏付けているように思われる.
質の高い医療・看護の提供と,リストラでの人員の削減,労働時間の短縮,効率は相反する極をもっている.患者とのかかわりの中で看護職者は両極から引っぱられ,思いやり,愛,社会奉仕,自己犠牲をいとわない傾向にある者の集団であるが故にきびしく自己犠牲へと追い込まれてゆく.今ここで何かが変わらなければ,看護婦不足の解消も,医療消費者への質の高い看護の提供もむずかしくなっていくばかりである.満足感のある看護の質を維持しながら看護職者の労働過剰を和らげるために,根本的な看護のシステム変化が必要になってきている.
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