調査・研究
患者・家族の不安分析序説―闘病記・看病記の情報価値
守屋 研二
1
1自治医科大学看護短期大学
pp.453-457
発行日 1994年6月25日
Published Date 1994/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900860
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
患者・家族の不安に関する知見の現実
患者とその家族の心は,種々様々な不安に際限なく支配され続ける.抱く不安には,死の不安,病状の進行や再発の不安,手術に対する不安,痛みに対する不安,仕事・職場への復帰の可能性に関する不安,経済的問題をはじめ家族の行く末の不安,入院先での同室者との人間関係の不安,見舞客に対する不安,病室で迎える孤独な夜への不安,介護する家族の心身の負担に対する不安などである.身体面のそれから死・孤独・生きがい喪失といった実存的なそれまで多岐にわたる.患者の中には,不安定な病状ゆえに,いったん消滅した不安が再び頭をもたげたり,複数の不安に同時に苦しめられたり,ときには病状の急激な進行により,強い不安に苛まれたまま終焉に至る場合も少なくない.
次々に出版される闘病記や看病記には,患者と家族がこうした様々な不安に追い込まれ,翻弄され,打ちのめされ,あるいは医療者の援助を受けてそれに立ち向かう姿が,臨場感豊かに記録されている.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.