特別記事
学生が「看護政策」を自分事としてとらえる意義と、教育の工夫
倉岡 有美子
1
1日本赤十字九州国際看護大学 看護の基盤領域(看護管理学)
pp.356-362
発行日 2023年6月25日
Published Date 2023/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202106
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はじめに:「看護政策」教育の課題
本稿では、筆者が学部生に教授している「看護政策」(以下、本科目)について、これまで行ってきた教育内容・方法の工夫を説明し、さらに、実際に学生が提言した政策例を示す。
本題に入る前に、筆者が、十数年前に助教として前任校に着任し、初めて本科目の講義を担当した際の学生の様子を紹介しよう。当時、本科目は、4年生後期の必修科目(2単位)であった。
各コマの講義は、筆者、筆者以外の専任講師、または外部講師(いわゆるゲストスピーカー)が行っていたが、一部の学生の私語が多く集中できていない様子がみられた。また、後半のコマでは、教員が提示した課題で学生がグループワークを行い発表する形式をとっていたが、発表に熱が入っておらず、看護政策を他人事のようにとらえているように感じられた。
このような学生の反応から、看護基礎教育課程で学ぶ学生は、卒業後は看護職者として就業し、患者や地域住民などに対して直接的な看護ケアを提供することを目標としているため、患者への直接的ケアに政策が影響しているとは認識しにくいことが大きいと考えた。
また、筆者自身も、直接的に政策にかかわった経験がなく、どのように教授すれば学生が自分事として政策に向き合ってくれるのかがみえず、手探りの状態であった。
そこで、筆者は、2012年に前任者から本科目の科目責任者を引き継いだタイミングで、看護学生が政策の学習に興味をもって取り組むことができるよう、教育内容を見直し、新たな方法を取り入れる必要があると考えた。本稿では、本科目における筆者の取り組みについて紹介する。
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