焦点 質的研究方法を用いた看護学の学位論文評価基準の作成―大学院博士課程における質的研究方法の教育
意義あるおもしろい質的研究論文を仕上げるための工夫
山本 則子
1
1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
キーワード:
質的研究
,
質の評価
,
論文
,
厳密性
,
科学哲学
Keyword:
質的研究
,
質の評価
,
論文
,
厳密性
,
科学哲学
pp.347-355
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100384
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はじめに
質的研究を用いた研究は,いまや看護研究の主流を占めている。調査によれば,看護系大学教員で研究を実施している者のうち,質的な研究方法を用いている者は7割近くにのぼるそうである(髙木,西山,2002)。方法論に関する研究者の認識も進んできた。おもしろい,なるほど,役に立つと思わせる論文も増えたが,そうとも言い難い論文も,実のところ多いと思っている方も多いのではないだろうか。
本稿では,質的研究による論文作成を指導する側,質的研究論文を査読する側を経験している立場から,今回作成された質的研究の評価基準(表,抜粋)のうち,よい質的研究論文をまとめあげるための工夫が考えられる部分について検討してみたいと思う。
最初に,本稿で述べる意見は,主にグラウンデッド・セオリー・アプローチについて学習して使用してきた筆者の経験に基づくものであり,現象学など,科学哲学上のオリエンテーションの異なる質的研究にはあてはまらない部分があるかもしれないことをお断りしたい。また,一部の方にとっては当然のことかもしれず,一部の人には納得しかねる部分もあるだろう。これが「意義のある質的研究とは何か」について,研究者間で活発な議論をする材料になればと思う。
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