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はじめに
筆者は臨床指導者として5年、看護専門学校および大学の専任教員として20年、実習指導に携わってきた。この間、実習指導を行った学生が看護師となり、ともに看護を実践するという経験や、臨床指導者および看護師長をしていた病棟に教員として出向き、実習指導を行うという貴重な経験をすることができた。このときの経験から、臨地実習における「教員」と「看護師および臨床指導者」(以下、指導者)の役割や位置づけについて考えてきた。そして、教員として実習指導に携わるときに、自分が今どの位置で実習指導を行っているのかを意識してかかわることの重要性に気づいた。
その後、大学において、実習指導を行う教員を指導する立場になったが、教員として実習指導に携わるときに、自分が今どの位置で実習指導を行っているのか、本来教員としての役割を果たすための位置づけはどこかということを意識してかかわっている教員は少ないと感じた。そのため、実習指導を行う教員に対しては、臨地実習は患者を中心に学生・指導者・教員でつくる授業であるが、授業であるからには教員はその結果をよりよいものにするために、現状に合わせて、ときにはいろいろな役割を担いながら、最大の学習成果を引き出すための支援を行う必要がある、と意識的に助言してきた。そして、教員の本来の役割は何かということをけっして忘れてはいけないと伝えてきた。
教員本来の役割を果たすためには、臨地実習で最も基本的なチームである「患者を中心とする学生・指導者・教員の臨地実習チーム」におけるそれぞれの役割とその位置づけを意識して行動することが重要である。このような考えのもと、実習指導に携わる教員の役割と位置づけをイメージしやすいようにわかりやすく説明し、理解を促すために図式化する必要性を感じていた。実習指導に関する役割については、指導者も役割や自分の立ち位置が明確でないことなどから、不安を生じることが報告されている1)。しかし、学生のレディネスや実習環境などにより、変化を求められる臨地実習における教員の位置づけを紙面上に描くことは、思った以上に難しく、長らく自身の課題となっていた。
そこで、筆者が科目責任者を務める3年次の臨地実習Ⅱ(老年)に携わった2名の教員に、「患者を中心とする学生・指導者・教員の臨地実習チームにおける教員の位置づけ(関係)」について、考えを記載してもらい、これを参考にして考察を行った。これらの内容や筆者の経験および学びに基づいて、複雑な臨地実習の場において、授業としての臨地実習の成果を最大限に引き出すための教員の役割と位置づけについて一考したので紹介したい。
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