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はじめに
新型コロナウイルス感染症パンデミックという災害下において医療従事者の不足を補うために潜在看護師に協力が呼びかけられ、ほどなくして大学の看護教員や大学院生へも協力の要請があった。「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の目的の1つに、現在保健・医療の現場で看護実践をしていない潜在看護職者の再就業促進があるが、この意味で看護教育者も潜在看護職者である。医療現場から離れている看護職免許保有者が災害時には大きな力となることを、あらためて認識することとなった。
筆者らは2015年より、災害時に潜在看護職者の力を活用する取り組みを知多半島地域において展開している。知多半島は南海トラフ巨大地震による被害想定地域である。広域にわたる大規模災害時には、被災地域外からの装備を整えた救助者が早期から被災地域全域で救助活動を展開することは難しく、救助者の到着に数日から数週間を要する地域もあると推測されている。その間、地域の行政、消防、医療、福祉の各機関が減災に向けた精いっぱいの活動を行ってもちこたえなければならないが、医療ニーズの最も高い災害急性期における対応には限界がある。このような状況下で重要なのは地域の共助力である。
東日本大震災の経験から、広域にわたる大規模災害時には地域コミュニティやNPOなどによる共助が、防災、減災とその後の復興期までを支える大きな力となることが広く認識されている1)。その災害時の共助力の1つとして看護の力が提供されれば、多くの被災者の命が救われるだけでなく、災害による健康障害を最小限に抑えることができると考えた。しかし、病院等で正規職員として働いている看護職者は災害時には職場に参集し、医療業務に従事することが求められる。一方、病院等で勤務していない潜在看護職者は災害時には地域住民の1人として住民と行動をともにするうえ、人々の健康を守るために必要な看護の専門知識を有している。そこで、潜在看護職者を対象とした災害対応研修会を開始した。
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