連載 眼科圖譜・3
潜在眼球(Kryptophthalmus)/兎唇(Hasenscharte)と潜在眼球
中村 康
1
1日本医科大学眼科学教室
pp.819-820
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201940
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眼瞼は角膜の上下両側に於ける外皮の延長によつて生ずる。内面は結膜となる。胎生7〜8ヵ月頃,上下眼瞼縁は接着する。此時眼瞼遊離縁では,上皮細胞の増殖が旺で,一時的に眼瞼裂の閉鎖を見るけれども,胎生末期になると,再び上下の瞼縁は隔離し,瞼裂を生ずる。
潜在眼球の発生は,眼球を蔽つているMesoderm,Ectodermが角膜にならないで,皮膚化したもので,初めから眼瞼結膜の発生を見ないのである。皮下に眼球様嚢状のものがあつて,筋力によつて廻転するように思われるけれども,組織的に見て,嚢胞であつて,.稀に不完全水晶体,角膜の形態を整えるものがあると言う。従つて瞼裂部と思われる処を開いて,下に眼球を露出することは望まれない。然し眼瞼が完全に出来て,瞼縁の充分離解しないでいる潜在眼球も存在すると考えられるけれども,私には未だ経験はない。此場合は瞼裂を切開して完全眼球を露出することが出来るであろう。
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