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はじめに
現在COVID-19によりわが国の政治、経済、医療、教育などが大きな打撃を受けている。特に医療現場での混乱は先行きが不透明であり、病院での臨地実習が根幹にある看護教育を行うわれわれも不安な状況に陥っている。看護教育施設においても、COVID-19の影響により臨地実習受け入れ施設から実習中止の要請があり、その代替策の1つとして文部科学省からはICTを用いた取り組み等1)が提案されている。
しかし看護基礎教育においては、学内で知識や技術を得るだけではなく、それらをリアルな現場で実践し、経験を積み重ねることに重要な意味がある。特に、看護学生が初めて臨地に出向いて学習する基礎看護学実習は、看護の基本となるコミュニケーションについて、患者をとおして学ぶ場でもある。すなわち、学内で事例展開や学生同士の看護師―患者役の演習を行うだけでは典型的なコミュニケーションの形を体験したに過ぎず、実践的なコミュニケーション力の向上まで期待できない。筆者らは、コロナ禍による臨地実習の代替実習であっても、学生の健康を守りながら実習のねらいが達成できるよう、できる限り臨地の学びに近い方法、すなわちリアリティをめざした工夫、実践をしていくことが学生に対する実習の質の担保になると考えた。
そこで修文大学看護学部看護学科(以下、本学)では、実習対象学生が状況判断のもと、「学内での実習」と「自宅からのオンラインによる遠隔実習」のいずれかを選択できるようにした。その実施にあたっては、学内でも在宅でも同様の実習ができるようにするために、Web会議システムを用いた方法を考案した。本稿では、オンラインでリアルタイムに劇団員が演じる模擬患者とのコミュニケーションを実践した方法と、その効果について紹介したい。
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