増大号特集 シミュレーション教育 虎の巻
第1部 なぜ、シミュレーションなのか
看護学教育のパラダイム転換―シミュレーション学習による「深く考え、行動する」看護者の育成に向けて
岡谷 恵子
1
1一般社団法人日本看護系大学協議会
pp.600-608
発行日 2019年8月25日
Published Date 2019/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201292
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パラダイム転換としてのシミュレーション学習
「平成28年版高齢社会白書」(内閣府)によると、今から40年後の2060年には、日本の総人口は9000万人を割り込むと推計されている。総人口が減少する一方で、高齢者人口は増加し続け、2035年には高齢化率が33.4%となり、2060年には約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来する。また、総人口の減少は生産年齢人口の減少をもたらし、2015年には総人口の60%を占めていた生産年齢人口が、2060年には50%に落ち込むと推計されている1)。このような人口構造の激変は、国の経済活動に影響を及ぼし、社会保障制度の根幹を揺るがすさまざまな問題を引き起こす。「病院完結型から地域完結型へ」「治す医療から治し支える医療へ」「地域包括ケアシステムの構築」とさまざまなフレーズで制度の転換の必要性が語られ、政策が打ち出されている。
高齢社会の到来は、看護人材育成にも影響を及ぼす。人口の高齢化や疾病構造の変化は、人々の価値観の多様化や家族形態の変化などと相まって、新たなヘルスケアニーズを産み出している。看護を提供する場も病院から地域へと拡がり、これからの看護者には、人々が暮らすあらゆる場で看護ケアを提供できる幅広い知識と援助技術が求められる。つまり、今後日本の社会が直面する健康課題に対応できる看護人材の育成はどうあるべきかという教育上の課題が問われている。
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