特集 理学療法におけるパラダイム転換
パラダイム転換と理学療法
網本 和
1
Amimoto Kazu
1
1東京都立保健科学大学健康科学部理学療法学科
pp.235-238
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105776
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パラダイムについて
今日パラダイムという言葉は,きわめて一般的な用語として人口に膾炙している.例えば新聞の経済欄では「銀行中心に企業が株式を持ち合う市場構造から,国民が全体でリスクを負う株式パラダイムの転換が課題である」などと記されている.ここでいうパラダイムとは考え方,物の見方という程の意味であろう.
しかしKuhn(1962)の定義は,「一定の期間研究者の共同体にモデルとなる問題や解法を提供する一般的に認められた科学的業績」をパラダイムとするものであり,限定的専門的な科学史的用語である.更にKuhnの業績について注目すべきことは,野家(1998)に拠れば,科学理論の転換が進歩の思想に基づいて連続的に起こるのではなく,断続的に起こり,またそれが通約不可能性を持つと主張する点であるという.ここでの通約不可能性とは,パラダイム転換の前後では同じ用語や概念を用いたとしても意味の変容が起こることを示している.
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