名詩鑑賞
私の花束—宮本百合子さんに—壼井繁治
長谷川 泉
pp.42-43
発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906823
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昭和文學の代表作家の1人である宮本百合子は1月19日副腎出血による急性紫斑病のため急逝した。本誌前號に寄せられた「生きるための協力者—その人々の人生にあるもの—」は,死の1ヵ月前,即ち昨年12月19日に多忙の中を特にさいて執筆されたものであつた。
宮本百合子は舊姓中條,明治32年東京に生れた。日本有數の建築家の富裕な家庭に育つた。少女時代から文學書を讀みあさり,樋口一葉やオスカー・ワイルドの影響を受けた。彼女の18歳の時の處女作「貧しき人々の群」は女學生時代に熱中したトルストイや白樺派の文學の影響を濃厚に感じさせるものを持つている。天才少女として文壇にデビユーした彼女のその後のコースは燃えるような知識慾によつて大作家への成長の途を辿つていつた。
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