Derm.2024
『アルジャーノンに花束を』(著:ダニエルキイス)より
杉山 聖子
1
1川崎医科大学皮膚科
pp.136
発行日 2024年4月10日
Published Date 2024/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412207289
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大学生のころ一冊のハードカバーの本を手にした.表紙に花束の描かれた印象的な本だ.物語は,手術により驚異的な知能を持つようになった知的障害をもつ青年,チャーリイの話である.天才的な知能を得て,それゆえの苦境や孤独も経験する.主人公はその知能がやがて損なわれることを突き止め,あらがうも運命を変えることができず物語は終わりを迎える.当時は物語構成の妙に驚かされ,幸せとはなにか,と主人公に感情移入し,読了した.
それから時間が経って,皮膚科医として専門医や学位を取り,第二子出産前後のころだったと思う.多分にもれず,復帰やなにやらで,悩みも深まりやすい時期だ.偶然書店で文庫版をみつけ,繰り返した引っ越しの中でなくしてしまっていたので軽い気持ちで購入した.読み終ってしばらくしてなにかが腑に落ちて,ひらけた,ように思った.私たちはみな,アルジャーノンであり,チャーリイなのだ,と.さまざまに違いはあれ,生まれて成長しいずれ終焉を迎える.それを客観的に外から見つめたような気持ちになり,強烈な印象を落とし込まれた.
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