巻頭言
日本での研究の進め方
吉川 春壽
pp.1
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905594
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幸いに機會を得て10年ぶりに米國を再び訪れることが出來た。今度は何分にも2カ月半という短期間のことであつたし,同位元素の應用技術という特殊な狭い範圍の見學を用件としていたので,到底一般的なことはわかる筈はないが,それでもその狭い見聞を通して,昔とくらべて見ると大變なちがいがあるのがはつきりわかつた。
とにかく,いろいろの研究室をまわつて見て,實驗装置の機械化がこんなにも進んだものかとおどろくばかりであつた。私がこの前米國にいたのは丁度10年前,太平洋戰爭がまさにはじまろうとしていた時であつたが,正直なところ,米國の研究室そのものの設備は日本のそれにくらべて手のとどかない程のへだたりがあるとは思わなかつた。勿論,よく訓練された實驗員や秘書がおつて日常の仕事はテキパキと處理してくれるし,動物小屋の管理はすばらしくよいし,教室内の連絡が圓滑で自由に他の專門の援助が受けられるというように,機構のうえでの能率的な優れた點はいくらもあつたが,實驗室の設備には,全般的に見てそれ程の事はないように思つた。
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