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リハビリテーション医学では,従来から医工連携によりさまざまな機器が開発され,最近では多くのリハビリテーション練習支援ロボットやvirtual reality(VR)を利用した機器(VR機器)が多く利用されている.ロボットについて研究が行われ,エビデンスが蓄積されつつある結果として,診療報酬に運動量増加機器加算が新設されたことは記憶に新しい.当院では,上肢リハビリテーション支援ロボットや歩行練習支援ロボットなどの研究を以前より行っており,成果を発信してきた.一方,VRについては,多くの研究報告が存在するが十分なエビデンスはまだ蓄積されていない.われわれはVRを用いたリハビリテーション治療の効果や適応についての研究を積極的に行っており,本稿ではVRについての紹介とともに,現在行っている研究について紹介をする.
VR技術は,熱傷,認知症,パーキンソン病,脳卒中などさまざまな疾患に対して臨床応用されてきた.コクランレビューでは脳卒中患者に対するVRリハビリテーション治療について,歩行能力や上肢機能の改善において通常のリハビリテーション治療を上回る明確な効果は示されていないと結論づけている1).しかし,このレビューにおけるVRは,非没入型VRと没入型VRを利用した報告が混在しており,特に,非没入型VRを使用した報告が多い.同じVRという名前がついてはいるが,それぞれのVRシステムは大きく異なり,リハビリテーション治療に与える効果は異なってくると考えられる.没入型VRとは,ヘッドマウントディスプレイを装着し,VR空間に没入することができる技術である.没入型VRがリハビリテーション治療に用いられるようになったのはここ数年であり,その効果はまだ検討の余地がある.最新の報告では,運動能力の向上にかかわっているのは,自分が身体を動かしていると感じる運動主体感であるとされている2).その点で,非没入型VRよりも没入型VRのほうがより効果が得られると筆者は考えている.しかし,いずれのシステムのVRであっても,効率よく運動学習ができる仕組みになっている.課題の難易度が調整しやすく,機器によっては現実の世界では実現しにくい課題も再現することができる.また,ゲーム性が高いものが多く,報酬効果も通常の訓練よりも得られると考えられる3).ただし,リハビリテーション練習支援ロボットと同様に,十分な効果を出すためには使用する臨床家の能力が必要になることは認識しておく必要がある.
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