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はじめに
1992年の医療法改正によって医療を提供する場に「居宅」が加わり,1997年から看護基礎教育において「在宅看護」が加わった。看護教育には「臨地実習」が大きなウエイトを占めており,「在宅看護学(論)」でも,2単位以上の「臨地実習」が求められている。実習施設として,訪問看護ステーションや,地域包括支援センター,介護施設,外来など,多様な場が存在しており,地域で生活する療養者への看護がどのように提供されているか学んでいる。そのなかでも,訪問看護師に同行する実習は,もっとも効果的な学習方法1)の1つとされている。しかし実習指導者には,看護の初学者に対する実習受け入れには肯定的な思いと否定的な思い2-7)があり,訪問看護ステーション管理者は,「実数施設側と教員との連携の強化」の必要性や,「在宅看護の実践能力を高めるための時間数を増やす」必要性を述べるもの8)もある。
筆者ら(表1)は日本在宅看護教育研究会を立ち上げ,訪問看護師の現任教育のプログラム開発と質の向上に取り組んできた。その過程で,看護学生と在宅看護学実習を受け入れている訪問看護師の両者にとって学びとなる場としての臨地実習について考えてきた。平成27年には,本田彰子教授(東京医科歯科大学)が中心となって,教育機関と実践機関とのコラボレーションを促進する取り組みを開始した。本誌では前・中・後編として,その成果を発表する。
前編は,東京医科歯科大学で実施したワークショップによって,在宅看護学実習に対する教員の戸惑いに対する1つの答えとして,「教育機関と実習施設とのコラボレーション」という発想が生まれた。我々の思考がどのように発展していったのかをまとめることで,発想の行きつく先を共有してもらいたい。
一方,学生たちは,訪問看護師とマンツーマンの環境下で,看護師としての思いや姿勢を目の当たりにして,影響を受ける者も少なくない。初学者の実習体験は,卒後の就職先や将来の職場選びに影響することが考えられ,在宅看護学実習が,学生にとって実り豊かなものになってもらいたいと常日頃考えている筆者らは,在宅看護学実習の実習指導者との連携を強めていくにはどうすればよいか,その示唆を得るためにワークショップを行った。
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