連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・6
皮静脈─でたらめなようで決まった流れ
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.429
発行日 2018年6月25日
Published Date 2018/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200991
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血管は比較的身近に感じられる器官です。皮膚のすぐ下に青色や紫色の蛇行した線として見えることがその理由かもしれません。この透けて見える血管を皮静脈と言います。わざわざ“皮”を付けるのは,筋の中にあって外からは見えない深静脈と対応しているのです。そのため,皮静脈は浅静脈とも言います。加齢にともなって皮膚が萎むと皮静脈はレリーフ状に盛り上がり,曲がりくねった走行が外見で目立つようになります。腕では肘から先,脚では膝から下でよく見えます。
皮静脈の走行は,一見ランダムに見えますが,実は誰もが似た走行をしています。そのため太くて見つけやすい皮静脈は採血をする血管として用いられます。これは静脈ですから,血流は指先から心臓へ向かっていることを意識しましょう。上下肢の静脈血はいつも重力に逆らって登らなければならないので逆流防止の弁が数センチごとにあり,血管上の膨らみとして見出せます。
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