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皮慮と眼と耳
pp.205
発行日 1953年4月20日
Published Date 1953/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200882
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盲人は額が眼の代りをしているということを,たしか,草問先生の「勘の研究」という本で見たことがある。それで,盲人は決して帽子を真深かにかぶらず,いつでも額を前に突き出して歩くそうである。先年盲學校の盲の校長さんに聞いたら,確かにそうだと云われた。横小路に用がなければ,真直ぐ向いて歩くが,そこに用があるときには,その附近で立停つて,額をそちらに向けてみるそうである。別に横小路から風が吹いて來なくても判るらしいから,私はこれを輻射線によつて知るのだと解釋した。
周圍の家からは輻射線が來るが,横小路からは來ないから識別出來るのだろう。恐らく輻射線といつても熱線に近いものだから,眼よりも波長の長い電磁波を感じていることになる。皮膚温を計ると,こゝは他の皮膚部分と異つて,餘り周圍の温度等に左右されず,體温が一定である限り,一定の温度を保持している事も,その作用に都合がよいことではあるまいか。發熱時には勘が鈍るのではないかとも想像される。
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