思いつくまま
皮と泌の分離を祝して
樋口 謙太郎
pp.90
発行日 1967年1月1日
Published Date 1967/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200086
- 有料閲覧
- 文献概要
本誌もいよいよ皮膚科と泌尿器科とを分離することとなつた由,もともと両科は全々別の学問領域のものが一緒になつていたことそのことがおかしいので,学会も分離した今日雑誌も分かれるのが当然のことと思う。なぜ皮膚科に泌尿器科がくつついたかを少々考証してみるのも面白い。私の考えを述べると,皮膚科は元来内科で取扱われたものであるが,皮膚病には癒りにくいものが多く,本道では厄介視されたことも想像できる。その中にはもちろん梅毒も含まれていた。他方外科に属する泌尿器科は膀胱鏡などの特殊の器械を用いる点から本格的の外科医から敬遠された傾向がみられ,ことに尿の変化を来すものに淋疾があり,当時面倒がられたことも事実である。内科・外科より異端視された皮膚科と泌尿器科が性病を通じて手をつないだものが皮泌科ということになる。ゆえに皮泌科を専攻する人達は特志家というべく,その意味では尊敬に価する。ただし両科は全々異なる研究分野に属するゆえ,必然的に独立する気運が生じ,最初九州大学に泌尿器科学講座が分離し,ついで慶大,東大がこれに続き,昨年度をもつて全国の国立大学では一応完全に講座の独立の工策は目的を達した。大学院の研究コースも皮膚科は内科コースに,泌尿器科は外科コースにほぼ一定したようである。
さてこうなると学会もおのおの別に持たれねばならない。東大あたりで夙にその気運が醸し出され,日本泌尿器科学会の発足をみた。雑誌も学会誌として独立し,日本皮膚科泌尿器科雑誌は,日本皮膚科性病科雑誌に,ついで日本皮膚科学会雑誌に変更された。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.