連載 「配慮が必要な学生」の学びにつなげる対応 臨地実習における教育上の調整を考える・9
学習意欲や集中力の低下や思考の混乱がある学生への対応
飯岡 由紀子
1
1埼玉県立大学大学院研究科/研究開発センター
pp.786-791
発行日 2017年9月25日
Published Date 2017/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200835
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本学生支援機構の障害のある学生の修学支援に関する実態調査では,それまで調査項目の「その他」に分類されていた精神疾患・精神障害が,2016年から独立したカテゴリーとなりました。精神疾患・精神障害は,病弱・虚弱についで2番目に多く,27.1%を占めています。その内訳をみると,神経症性障害(31.8%),気分障害(29.1%),統合失調症(12.8%),摂食障害・睡眠障害など(8.2%)でした1)。精神疾患・精神障害の学生数の多さとともに,統合失調症の多さに驚かされます。
ADA法(Americans with Disabilities Act of 1990:障害による差別を禁止する公民権法)をもつ米国においても,大学の障害学生支援は身体障害が主で,精神障害は不十分といわれています。日本においては,学生数の増加に,支援体制がともなっていない現状では,看護教育,特に臨地実習での対応に苦慮することは,当然のことなのかもしれません。しかし,安全性を確保しながらも,学生のよりよい学びにつなげる対応の仕方を検討することは重要な課題です。
今回は,学習意欲や集中力の低下や思考の混乱がある学生を取り上げました。うつ病と統合失調症の前駆期は,非常に類似しており,区別が難しいことで知られています。統合失調症の好発年齢は17〜25歳であり,大学生のときに発症することもあります。これらをふまえ,受診につなげる対応までについて検討したいと思います。架空の事例(学生Wと実習担当教員S)との場面を提示し,教育上の調整について考えてみたいと思います。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.