特集 ポストコロナの感染症
予防医学
エアロゾルと空気感染の混乱
加藤 英明
1
1横浜市立大学附属病院 感染制御部
pp.366-370
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023030013
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はじめに
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は従来いわれているような純粋な飛沫感染ではなく,より微細なエアロゾルが主な感染経路とされている.エアロゾルという単語について世界共通の定義はない.一般的には空気中に浮遊するあらゆる大きさの物質粒子を総称してエアロゾルと呼び,扱う領域によって定義が異なる.物理学の領域では「空気中を漂うチリ,花粉,PM2.5(大気汚染物質),タバコの煙などの微粒子」と呼ぶ.感染対策の領域では,歌唱や会話で発生する病原体を含む1μmレベルの微粒子が感染対策上のエアロゾルと考えられる.この粒子径のものは落下運動をせず,ブラウン運動によって長時間空気中を浮遊する.たとえばタバコの煙は0.25〜0.45μmの大きさであり,落下せず前方および左右1 m程度に広がる1).動物での感染実験では,経鼻的なウイルス投与よりもACE2の多く発現している肺胞まで到達できるエアロゾルのほうが少ないウイルス量で感染するとされ2),SARS-CoV-2はエアロゾルでの感染に有利な病原体といえる.
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