連載 リズムとからだ 「うまくいく」と「うまくいかない」の謎・4
歌の力と「ノる」の秘密
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.558-561
発行日 2017年7月25日
Published Date 2017/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200788
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こんにちは,伊藤亜紗です。この連載では,吃音を手がかりに,私たちが体を動かし動かされるその制御の謎に迫ろうとしています。
私たちは「話す」というと言葉や音のことを思い浮かべがちですが,それはまぎれもない身体運動でもあります。言葉や音としてとらえるかぎり,たとえば「たまご」は3つの音の連なりにすぎません。しかし身体運動としてみるならば,それは「ta→ma→go」と声道の形状をなめらかに変形させていく「モーフィング」の過程です。この複雑なモーフィングのプロセスに困難があるとき,そこに生じるアイドリングが吃音なのではないか。このことを前回確認しました。もちろん吃音はこれ以外にも複合的な要因をもちます。しかし運動制御に焦点を当てた場合,この移行部分にかなりの困難があるようです。
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