連載 続・白衣のポケット・12
白鳥の歌
志水 夕里
pp.1004
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901342
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呼吸不全で人工呼吸器をつけるということ。それが,単に呼吸をサポートするだけの意味ではないことを,本人や家族にきっちり説明しないままに,挿管する事態は,いつになったら改善されるのだろうか。
声を奪われ,鎮静のために意識を奪われる。したがって,家族への役割も,社会的役割も,能動的なものはすべて失う。それが,回復のための一時的なものならまだいい。実際,自己免疫疾患や化学療法後の感染で,肺炎による呼吸不全となると,回復はかなり難しい。経験上,数パーセントと言っても過言ではないように思う。命を助けるためと言われれば,反対する家族はいないであろう。若いから期待できると言われれば,望みを強くもつだろう。そうして挿管した結果,ものも言えずに亡くなる人を何人見送ったことか。若いゆえに,残された家族も若かったり,幼かったりする。残った者たちは,母なり父なりの,思いすら聞けずに死に直面しなければならないのだ。
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