連載 すべって,転んで,立ち上がるために 〜看護職生涯発達学から〜・1【新連載】
看護職生涯発達学が見つめてきた,看護師の逞しさと繊細さ
佐藤 紀子
1
1東京女子医科大学
pp.308-313
発行日 2017年4月25日
Published Date 2017/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200729
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看護実践から培われた「知」の発信
今年の新年早々の新聞記事で,日本老年学会と日本老年医学会が,高齢者について現在の65歳以上という定義を改めて,75歳以上にしたらどうかという提言をしたことを知った。「なるほど」,「当然かも」と思った一方で,高齢社会のなかで看護職にできることをあらためて考えることにもなった。
医療福祉関連の国家予算が膨大になっていることから,医療費や介護保険料の自己負担増の話題が後を絶たない。そしてこのような社会保障制度をどのような方策で維持するのかについて議論が続き,近い将来,大幅な見直しがなされることも想像に難くない。人間にとって「生老病死」は避けて通れない普遍的な出来事であり,これから日本が迎える多死社会は,その課題に1人ひとりが向き合うことを余儀なくされている。看護師はその仕事の宿命でもあると考えるが,多くの患者の死,死に至る過程に参与し,そのことで多くの経験を積んでいる。しかし,看護師が自らの経験からつむがれた教えを,社会に広く発信する機会はあまりに少ないのではないだろうか。私は,経済や財政の側面からだけで人が老いて死んでいくことをとらえ,議論することに大きな違和感を覚えている。
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