連載 優れた“わざ”をどう伝えるか 技術の「背後にある意味」を教える・3
ふれる─境界線を越える マッサージ
阿保 順子
1
1北海道医療大学大学院看護福祉学研究科
pp.228-233
発行日 2017年3月25日
Published Date 2017/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200711
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「普通」という言葉のもつ意味の難しさについては,食べることを例に前回多少ふれた。看護技術は,一見「普通」のことに属すことが多い。たとえば気分が悪くなった人の背中を撫でるという普通のことで,その人を楽にすることができる。「普通」の領域に属する多くの看護技術が,安寧をもたらす何かを孕んでいるのである。その孕んでいる最大のことが,今回のテーマである“境界線を越える”という事態である。境界線を越えるというのは,患者さんも看護師も1人ひとり別々に存在する個人であること,つまり区別される個別な存在であるということが前提にある。
他人との境界線は,からだで言えば皮膚である。その皮膚に「ふれる」ことで多くの看護技術は成り立っている。皮膚に「ふれる」ことは,フィジカルアセスメントをはじめ,前回取り上げた寝衣交換や清拭などの清潔の援助,体位交換や呼吸法などの安楽のための援助など,ほとんどの看護技術に通底している。そして「ふれる」を突き詰めていけば,コミュケーションという看護技術の大事な根幹へとたどり着く。その意味で,「ふれる」ということは看護技術の重要な概念である。今回は,マッサージという具体的な行為を取り上げ,「ふれる」註について考えたい。
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