増大号第2特集 看護学生・教員エッセイ─入選エッセイの発表
学生部門
生きることへの思い
大矢 卓司
1
1公立西知多看護専門学校
pp.634-635
発行日 2016年8月25日
Published Date 2016/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200561
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運転中,危険を感じて咄嗟にブレーキを踏んだが,目の前が真っ暗になった。寝入ったような感覚の後,痛みで目を覚ました。確かに痛いのだけれど,今まで感じたことのない違和感に底知れぬ恐怖を感じた。目を開けるとそこにはマスクをした医者らしき男がいて,「わかりますか」と大きな声を張り上げていた。事故に遭ったということは記憶を辿って想像できた。問題は痛みと同時に覚える違和感だ。どこが痛くてどこに違和感があるのか。医者に,「さわっているのがわかりますか」と聞かれ,自分に起きていることが直感的に理解できた。違和感は,両手両足の感覚がまったくないせいだった。首や腰,体中が痛いはずなのに,それを忘れてしまうくらい血の気が引いたのを今でも鮮明に覚えている。
信じられるか。さっきまで働いていたのに,こんなことが信じられるだろうか。
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