メディカルエッセイ
ニューヨークでの思いで
中村 宏
1
1防衛医科大学校泌尿器科
pp.246
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902295
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私は1962年7月にニューヨークのMount Sinai Hospital(MSH)のレジデントになった。当時,MSHでは膀胱全摘除術後の尿路変向術にはもっぱらBricker回腸導管造設術が行われていた。その頃,MSHにはDr.Stanley I.Glickmanというニューヨーク界隈の泌尿器科医なら知らない人がいない手術の名人がいた。週の3日は1日中手術場におられた。それだけの患者を手術すれば,腕が上がるのは当然だと思った。趣味は絵画の収集で,とうとう白宅の隣に美術館まで建ててしまった。
MSHが医科大学になったとき,誰もが彼が初代の教授になると思っていた。しかし彼は固辞してClinical Professorとして臨床を続けた。Dr.Glickmanの手術は基本に忠実で,正確無比な手術だった。年間40名前後の膀胱全摘を行っていたが,手術合併症としては,尿管回腸吻合の縫合不全が起きた1名しか記憶にない。
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