増大号第2特集 看護学生・教員エッセイ─入選エッセイの発表
学生部門
【宮子あずさ賞】彼
原 のぞみ
1
1久留米医師会看護専門学校看護専門課程看護科
pp.630
発行日 2016年8月25日
Published Date 2016/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200559
- 有料閲覧
- 文献概要
「おい」
お腹の大きな彼は私をいつもこう呼ぶ。彼は末期患者であるが未告知であり,「いつかは元気になって看護師をデートに連れて行く」と毎日言って過ごしている。部屋には筋トレ用のダンベル,杖の代わりに登山用ステッキがあり,病室とは思えない空間。抗癌剤の副作用が出現して苦しいはずだが必ず香るオーデコロン。嘔吐をくり返しているのに冷蔵庫には栄養ドリンク。男気いっぱいの彼はオムツの上からトランクスの重ね着。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.