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はじめまして
私の専門は教育社会学・労働社会学で,最近は自治体や地域による生活・就労困難者支援,それから,高校や大学における労働教育実践の研究をしています。大学では,専門科目やゼミに加えて,教職課程や社会人大学院も担当しています。
大学時代は体育会軟式テニス部に所属。通った大学には医学部付属の看護学校があり,その学生たちと一緒にプレーしました。看護学生寮にときどき泊まって,授業や実習の様子を,「人さまの病や生死と向き合ってプロになっていくんだなぁ」と,興味深く聴いていました。こうした個人的経験のご縁なのか,社会人大学院では2013年度に,看護専門学校の先生である荻原康子さんの修士論文指導を担当しました。論文タイトルは「高卒超看護学生の職業選択動機と就学中のリアルから捉える『リスク』と『コーピング』」,原稿用紙換算で400枚近くの力作です*1。「高卒超看護学生」とは,短大や四大を卒業後,あるいは企業勤めを経験後,入学してきた学生たちを指します。
「高等教育機関で無駄飯を食って,あるいは,社会人をやってから看護学校に入ってきたのだから,高い目的意識をもって,ストレートで来た学生たちに範を示しながら,学んでくれるだろう」。教師側の,こんな思い込みがガラガラと音を立てて崩れたときの衝撃を,知的なパッションと学術的な作法(academic arts)に変換し,やり抜いた研究です。
「そうか,看護学校の先生って,『教える』ことに関してそういう課題をもっているのだなぁ。なんだ,大学教員と一緒じゃないの」。前述のように,私は教職課程も担当し,つまり,教えることを教えているので,修論指導を超えて,看護教育にも大きな関心を抱いたのです。もちろん私は,看護の専門家でも看護教育の専門家でもありません。けれども,人さまに何かを教えるということには,専門分野や領域の違いを超えて,共通する課題があります。それを一言で言えば「へたな授業は罪深い」。以下ではこの話を展開していきます。
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