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Key Questions
Q1:地域包括ケアシステムと社会的孤立の関係とは?
Q2:迎え入れる力とは?
Q3:不慣れでつまずくのは誰なのか?
はじめに
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について考察するためには,まず,このシステムが精神障害のある人にとって「なぜ必要なのか」と「その成果は何か」を根元から(または足元から),あらためて考える必要があるだろう.
従来から精神障害のある人(以下,当事者)へのケアは,多くの場合,医療や障害福祉のサービスにて行われ,老齢化による生活障害の程度によって介護保険へと移行されてきた.そのために,医療と障害福祉の連携,また,65歳問題に象徴される障害福祉と介護保険との連携について取り沙汰され,そのつど,筆者を含む支援者は連携強化に努めてきた.加えて,当事者のライフスタイルによっては,教育や労働の機関,企業,不動産関係等,多岐にわたる事業所とも連携しながら,その時々に当事者が抱える問題を解決するべく奔走してきた.同時に,新たな支援事業所も次々に開設され,通所施設や居住施設を町に生み出していった.それらの取り組みは,社会が精神障害に対する新たな価値観と言葉を醸成するきっかけとなり,包摂的な社会へとつなげる一助になってきたとも思う.
これまで,多くの障害福祉従事者が積み重ねてきたこれらの実践は,精神障害を抱える人たちの生活に一定の変化と回復をもたらしてきたといえるだろう.しかし,これらの取り組みはなぜ必要だったのかの本質を考えると,筆者は「社会的孤立」というキーワードに行き着く.日常のつまずきが繰り返されることで,当事者たちは次第に自分自身や自分の生活を少しずつあきらめ,表面的には傷ついていないように振る舞うことで心のドアを閉ざす.そうやっているうちに,“自分の人生は所詮そんなもの”と,あきらめながら生きることが日常化し,他人との対話で辻褄を合わせる面倒さに襲われ,次第に社会を遠ざけていく.
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