連載 “医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング・Training 4
“リスクアセスメント・クエスチョンリスト”の活用
斉藤 奈緒美
1
,
石川 雅彦
1
1公益社団法人地域医療振興協会地域医療安全推進センター
pp.778-784
発行日 2014年8月25日
Published Date 2014/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102798
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はじめに
本邦では,2001年以降,医療安全推進のためのさまざまな施策が実施され,各医療機関においても医療安全管理体制整備と,医療安全管理者を中心とした医療安全推進の取り組みが展開されている。看護学生(以下,学生)が卒後飛び込む臨床現場は,変化を遂げており,卒前からの医療安全教育の必要性が高まっている。
日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の公開データ検索1)でも,学生が直接関与,あるいは間接的に関与した医療事故,ヒヤリ・ハット事例の報告が挙げられている2)。この公開データ検索で“看護学生”というキーワードで検索すると,2014(平成26)年5月現在29件の事例が抽出された。報告事例には,「リハビリ室内でベッドから椅子へ移動する際に学生と一緒に歩行してもらったところ,患者が膝折れして床に座り込んだ」「学生が,受け持ち患者の同室患者に,ベッドのギャッジアップを依頼され,看護師に報告せずに実施後に,患者が誤嚥した」「学生が受け持ち患者のシャワー浴介助中に,指導していた教員が他学生の指導で一時的にその場を離れた間に転倒した」など,学生だけでなく実習指導者や看護師,理学療法士など,学生にかかわる医療機関の職員,および看護教員間でのリスクアセスメントが十分に実施されていないことが関与していると思われる事例も挙げられていた。
そこで,本稿では看護基礎教育における医療安全教育に焦点を当て,学生の“リスクアセスメント力”育成の現状と課題,および“リスクアセスメント力”を育成するための実践的トレーニング例についても提案する。
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