連載 心一文字・6
『痣』
園家 文苑
,
水戸 優子
1
1神奈川県立保健福祉大学
pp.463
発行日 2014年6月25日
Published Date 2014/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102714
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小学一年生の息子には頬と耳との間に2 cm程の黒い痣がある。生まれつきのもので,乳幼児健診のときには医師からいつも「小学校に上がったらレーザーで焼くといいですよ」と言われてきた。
先日,その息子が「おかあさん,なんでぼくにあざがあるの?」と訊いてきた。そろそろ外見が気になる年かと思いつつ,「生まれつきあるんだよ。レーザーをあてたら消せるんだって」と言うと,「えーっ,消したくない。ボルト選手(ジャマイカの陸上競技選手)の子どもだと思いたいから。足が速くなりたいから,このままでいいんだよ!」との答え。息子の「なんで」は,痣にボルト選手とのつながりを感じることからきたポジティブな問いだったのだ。私は,息子が痣の黒さと黒人のボルト選手とを重ね見る感性と,弱みとも思える『痣』さえも強みに変えてしまう力に感心した。
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