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はじめに
看護の質保障のために,国や臨床,教育現場でさまざまな改善策が講じられてきた。看護基礎教育においては,社会や臨床で求められる看護実践力を視野に入れた教育も緊急課題であり,多くの試みが積極的に行われている。2009(平成21)年7月の「保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律」の改正により,新たに業務に従事する看護職員の臨床研修などが,2010(平成22)年4月から努力義務化された。そんななか,昨年(2012年)は,新卒看護職員離職率が7.5%となり,常勤看護職員離職率とともに4年連続で減少傾向が見られた1)。
看護基礎教育の変革が早期離職防止に寄与したのか,効果的な新人教育方法があったのかなどは,今後検証が必要であろう。いずれにしろ看護基礎教育の現場では,社会や医療が求めるニーズをキャッチして卒業時の到達目標を学生と教員が共有して,学生自らが主体的に成長を実感できる創造的な教育方法が求められているのである。看護実践力を育むためには,教育体制の整備と教育方法のさらなる改善が求められているのである。教育体制としては,全教員が目標を共有化して一体となって臨み,大学と臨床や地域との緊密な連携システムをつくることが重要であろう。
日本赤十字広島看護大学(以下,本学)では,上記の現状を受け2009~2011(平成23)年度に文部科学省の大学教育・学生支援推進事業学生支援推進プログラム(以下,本事業)を申請し,採択された。テーマは,「看護学生のための早期離職予防シミュレーション・ナビゲーター」2)である。入学からの4年間で看護実践力を育み,卒業後の早期離職を予防することを目標としたものである。本事業は3年間で,学生を輪の中心として教員,臨床看護師,地域住民が共に考え,行動して発展させてきた。そして今ではなくてはならない教育環境やプログラムとなってきている。高校生の看護大学選択では,本学の教育環境の魅力を入学理由に挙げる者も増加しており,また模擬患者さんたちは,「4年間,一緒に成長しましょう!」と学生にエールを送り見守ってくださっている。それらは,想定外の効果ともいえるのであるが……。
本連載では,学生を育む3年間の教育方法の開発経緯とその成果や課題を,13回に渡って紹介させていただく。この連載が,看護教員や臨床看護師の方々に関心をもっていただける内容になることを目標に,書きつないでいきたい。読者からの,忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである。
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