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はじめに
クリティカルケア看護とは,生命を脅かす健康問題に対する人間の反応について取り扱う看護の専門分野である1)。また,江川2)はクリティカルケア看護とは場や病気を問わず,急性の生命危機状態にある患者の生命を守るとともに,患者および家族に対して状況に応じた最高の安楽を提供することであると述べている。わが国においては,クリティカルケア看護はICU看護と称され,1960年代以降のICUの普及とともに広がった3)。クリティカルケア看護実習は,2000年を境に基礎看護教育課程に導入する必要性が指摘され始め,その学習効果を評価する研究がなされている4─7)。その成果として,学生がクリティカルケア看護の特徴とともに看護行為への幅広い気づきを得ている7)と報告されている。
しかしながら,ICUや急性期医療が中心となる場は医療優位の環境であることから,看護者が病態学や生理学,医学に偏った思考になりやすく,ケアの価値が実感されにくいことが指摘されている8─10)。そのため,クリティカルケア看護を必要とする場では,看護独自の機能を捉えることに困難さがあると寺島は述べている11)。
つまり筆者らは,学生がクリティカルケア看護の独自性を捉えにくい状況にあるのではないかと疑問を感じ,学生が医学や科学技術の優位性のみに偏らず,看護の本質を捉えられるよう指導方法を検討する必要があると考えた。さらに,クリティカルケアの現場は搬送状況や入室患者の状況により,学習効果にばらつきが生じる。そのため,限られた実習時間内における学習効果を高めるため,学生が看護独自の機能を学習した場面を明らかにし,設定し,意識づけることによって看護の本質を捉えることが可能になるのではないかと考えた。
したがって本研究では,学生が記述した見学実習記録から,学生がクリティカルケア看護の独自性を捉えた場面とその頻度を明らかにし,今後のクリティカルケア看護実習においてクリティカルケア看護の独自性を学習できる指導方法を検討することを目的とした。
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