連載 整形外科医療・機器開発秘話
Kurosaka Screw開発の経緯
吉矢 晋一
1,2
,
黒坂 昌弘
1,2
1西宮回生病院整形外科
2神戸大学名誉教授
キーワード:
Kurosaka Screw
,
anterior cruciate ligament reconstruction
,
interference screw fixation
Keyword:
Kurosaka Screw
,
anterior cruciate ligament reconstruction
,
interference screw fixation
pp.345-348
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_345
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は じ め に
Kurosaka Screw(黒坂スクリュー)[DePuy Mitek社]は膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)再建術における移植腱の固定材料として開発されたものである.ACL再建術はスポーツ膝外傷に対する手術の中でもっとも数多く行われるものであり,日本整形外科学会の症例レジストリー(Japanese Orthopaedic Association National Registry:JOANR)の年次報告書では,すべての手術術式中14番目にランクされ,わが国における年間手術数は15,000件を超える件数に達している1).米国国内における統計をみても,毎年10万件以上のACL再建術が行われている2).本手術で用いられる自家移植腱は骨付き膝蓋腱(bone-patellar tendon-bone:BTB)とハムストリング腱が代表的なものであるが,世界の膝スポーツ医に対するアンケート調査における統計で,Kurosaka Screwをその先駆けとするheadless interference screwは,半数近くの外科医により,移植腱の固定法として採用されている3).したがって,Kurosaka Screwは日本人が開発した整形外科医療機器の中で世界でもっとも多く使用され,認知度の高いものの一つではないかと思う.
このスクリューは,1983~1984年に米国のCleveland Clinicに留学していた共著者の黒坂昌弘医師により開発されたものであるが,本稿ではその開発の経緯について,当時の状況やそこから学ぶべき教訓などを述べ,話題の提供としたい.

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