徹底分析シリーズ スガマデクス(基礎編)
取り込めば丸く収まる!? スガマデクス開発の経緯
武田 純三
1
Junzo TAKEDA
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.226-229
発行日 2010年3月1日
Published Date 2010/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100881
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スガマデクスsugammadexは,現在のSchering-Plough社,かつてのOrganon社のシニアリサーチフェローであるAnton Bom博士によって見いだされた。海外では2001年7月より臨床試験が開始され,2008年7月にEUで承認,9月からスウェーデン,フィンランドで発売が開始された。わが国でも2005年9月より臨床試験が開始され,2010年4月より発売の予定である。
スガマデクスの名前の由来は,sugar, Gamma cyclodextrinからきており,商品名は「BRIDION(ブリディオン)」と命名された。selective relaxant binding agentの日本語訳として,「選択的筋弛緩剤結合剤」あるいは「特異的筋弛緩剤結合剤」を申し出ていたが許可されず,添付文書には「筋弛緩回復剤」と記されることになった。
スガマデクスの最大の特徴は,その作用機序にある。患者に投与された薬物は,受容体などを介して直接生体に対して何らかの作用を及ぼすことで薬理作用を発揮する。しかし,スガマデクスは血管内で薬物同士が結合し,筋弛緩薬の作用を生体内で不活性化するという新しい概念にもとづく,初めての薬物である。
また,麻酔薬の開発が進み,麻酔導入や作用持続時間が短い薬物が開発されてきたなかで,理想的な筋弛緩薬の開発が追いついていなかった。そうしたなか,スガマデクスの出現は,理想的な筋弛緩薬を作るのではなく,筋弛緩作用を中和するという別の手段で,中間作用持続型のロクロニウムを短時間作用型の理想に近い筋弛緩薬に仕上げた点でも,特徴があるといえる。
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