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書評―『駐在保健婦の時代 1942─1997』―駐在保健婦の語りから学べることは多く,学生のアイデンティティ形成にも役立つ
岡本 玲子
1,2
1岡山大学大学院保健学研究科
2一般社団法人全国保健師教育機関協議会
pp.1061
発行日 2012年12月25日
Published Date 2012/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102270
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本書は,保健婦を国家と国民のはざまに立つ存在として注目し,彼女らがどのような技術・意思・態度で駐在活動に臨んだのかについて,歴史学の方法を用い,膨大な資料に加え「聞き書き」によって,その実態を浮かび上がらせたものである。
若き歴史民俗学者がこのテーマを探求した背景には,高知県で駐在保健婦をしていた祖母の存在がある。またそれが,30数名の元駐在保健婦からの聞き書きを可能にしている。著者は,1994年度提出の卒業論文以降,修士論文,博士論文に渡り10年以上このテーマに取り組んできた。1997年の地域保健法によって駐在制は全面廃止されたが,著者が歴史に実在した駐在保健婦の生きざまを,本書によって世に送り出してくれたことに,これからの保健師教育を担う者として心から敬意を表したい。
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