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―『駐在保健婦の時代1942-1997』―駐在保健婦の足跡,その語りに保健師活動の原点あり―新しい視座による保健師歴史研究書の誕生
名原 壽子
1
1三育学院大学看護学部
pp.156
発行日 2013年2月10日
Published Date 2013/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664102084
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本の命は帯に示される。本書の帯に「地域に生きる。」「地域を丸ごと支えた人たちの姿が蘇る! 若き歴史・民俗学者による圧倒的なオーラルヒストリー。」とある。かつて,本誌第56巻第13号(2000年12月号)に森田ゆり氏が「保健婦という,日本が世界に誇れるコミュニティー・スペシャリスト」と表現し,「日本の保健婦の世界的にもユニークな役割」について言及したように,本書は,住民に寄り添い,地域丸ごとを支えることを使命とする保健師の役割,仕事を,感動とともに,心に沁みて感じ取れる書である。また,「聞き書き」の手法で時代の特徴を切り取って綴ってある点でも,保健師に関する歴史書のなかできわめてユニークな位置づけになると言える。
著者は,高知県の駐在保健婦であった祖母への聞き取りを発端に保健師の歴史研究に着手し,学士,修士,博士論文と研究を積み重ねた。さらに研究を深め,その集大成として近代日本の公衆衛生政策の変遷,最後の第8章に保健婦駐在制廃止をめぐる動向を加えてまとめたのが本書である。新進気鋭の歴史・民俗学者として保健師の歴史研究に民俗学的視点から新しい風を送り込んでいることは,本誌連載「『保健婦雑誌』に見る戦後史」の読者はすでにご存知のことと思う。
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