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はじめに
看護教員が学生に,レポートなどの「書く力」が必要とされる課題を出すときには,教員として,また“ステキな看護師”としてさまざまなものを書いてきた体験を総動員していることだろう。目の前の学生のレディネスを考慮したうえで将来まで見通し,理想的な「書く力」のあり方をイメージし,さまざまな意図・期待を込めていると思われる。もちろん期待だけではなく,教育経験からの現実的な割り切りも含まれているだろう。この教員の意図・期待・割り切りは,特に初年次の学生を対象とした場合,課題の内容,提示の仕方,評価方法にどのように反映されているのだろうか。
高校を卒業したばかりで大学や専門学校で学び始めた学生には,教員の期待を推察する力は十分にはなく,高校卒業時までに感想文,小論文を執筆した体験により刷り込まれた「書く力」観の影響が大きいと,学生の言動,書いたものを通して筆者は感じている。
それゆえ,学生の「書く力」の適切な指導には,本人の「書く力」観および実際に書いているものの現状を正確に認識したうえで課題を出し,評価し続けることが欠かせない。杉山1)も指摘しているように,教職員の共通理解,意図性,継続性,一貫性を軸として教育を行うことが重要である。特に,日本語表現法など,転換教育・初年次教育の立場での書くことに特化した授業を実施するカリキュラム上の余裕がない場合は,専門科目での教示のあり方,レポート課題の提示方法,評価方法,フィードバック方法が,学生の「書く力」観の涵養・転換に大きな影響を及ぼす。
そこで,今回は,入学直後の学生がレポート課題に直面した際に発する「何をどう書いたらよいのかわからない」というつぶやきを出発点にし,「書く力」の適切な指導について検討する。教員が自身の意図・期待・割り切りを正確に理解し,課題・授業をデザインするための方法,あるいは,教員が期待する「書く力」観を学生に意図的に継続的に伝え,レポート執筆時の学生の負担を講義中の指導を通して軽減し,執筆したレポートが評価され自信につながり学習意欲の高まりにつなげることを目指した指導方法に関する提案を,ノート・テイキングの指導を例に行う。なお,この指導方法は,学生が用意するノートだけではなく,教員が用意し授業中に取り組ませる課題シートにも応用できるものである。
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