Coffee break
迅速かつ正確
星長 清隆
pp.63
発行日 1995年3月30日
Published Date 1995/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901433
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脳死下の臓器提供が未だに受け入れられず,しかも年間の献腎移植数が200例を僅かに越えるようなわが国の現状では,欧米諸国では使用されないような.極めて悪条件下で摘出された死体腎でも移植に用いることは少なくない。当施設は脳外科医の理解と協力のもと,過去10年以上にわたって年間10例から18例の心停止ドナーから死体腎の提供が有るという本邦では稀な施設である。ところが御多分に洩れず、当施設でも最近,MRSA院内感染が増加し,MRSAによる気道あるいは尿路感染の頻度が増えつつある。また,多くの脳死患者は既に何らかの脳外科的治療を受けていることもあり,心停止に陥る直前まで,発熱や未梢白血球の上昇,CRPの上昇などが認められることが多く,重症感染症との鑑別が困難であることも少なくない。もし,移植腎と共にMRSAが免疫抑制下にあるレシピエントに持ち込まれた場合,生命予後にも係わる重篤な感染症を引き起こす可能性がある。したがって,腎摘出から移植までの限られた時間内に,術前に喀痰や尿から検出されていたMRSAが,血液,あるいは腎保存液中に存在しないという確証が死体腎移植には必須条件である。ただ,従来からの培養法では,菌の同定までに24時間以上を要し,あまり現実的とは言えない。
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