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書評 ―『文化と看護のアクションリサーチ─保健医療の人類学的アプローチ』―看護の真のニーズに迫るために有効なアクションリサーチの薦め
眞鍋 知子
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1防衛医科大学校医学教育部衛生学公衆衛生学講座
pp.475
発行日 2011年6月25日
Published Date 2011/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101786
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アクションリサーチとは,目標をフィールドである地域の人々の手で設定し,生み出す結果は地域にとって最も適した形で活用できるように提供される研究手法である。研究者の役割は,地域住民が個々の持つ問題を意識化できるように支援し,自治体や行政担当者への通訳者としての役割を担うことである。医療従事者は,各々の領域における専門的な知識により地域住民の生活をコントロールし,地域の自己効力感を損ね,エンパワメントのプロセスを阻害しかねない立場である。自然主義的調査に比べると長い時間がかかり,コミュニティ内部等での対立など予期せぬ問題が生じることも考えられる。しかし,地域住民と調査者相互の信頼と連帯感を育み,パートナーシップを形成する方法としては非常に有効なリサーチと考える。アクションリサーチを通じて,人々が自ら問題を顕在化させ,行為の結果を理解する思考や行動の仕方を学習し,より解決を探求するプロセスの継続へ導いてゆくことができる手法として,看護における教育や研究に有用であろう。
なお“人類学モデル”とは,既知の事実から因果関係を引き出す“疾病モデル”とは違い,文化,環境,教育,治安,経済政策など社会的視座に立ち,総合した影響関係を明らかにすると筆者は述べている。人々が自身の健康状態を理解し対処できるかは,必要とする保健医療サービスの種類との関連がある。
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