連載 現場の学としてのアクションリサーチ―ソフトシステムズ方法論の理論と実際・1【新連載】
アクションリサーチとは何か①
内山 研一
1
1大東文化大学経営学部企業システム学科
pp.324-328
発行日 2000年4月10日
Published Date 2000/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901191
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はじめに
現在いろいろな分野で,理論と実践の乖離が問題になっている。それは,既成の学問や理論と現実とがずれていると捉えることもできる。私が専門としている情報論やシステム論の分野でも,IT(Information Technology:情報技術)革命などと言われるように,ハードの技術的な面の驚くべき進歩が急である一方で,その技術をわれわれがどう運用し,使いこなしていくかというソフト面においては,ほとんど満足な答えを見いだせないでいる。仮想現実などというコンピュータ上のサイバースペースが,今後どのようにわれわれの生活に影響を与えていくかを吟味し評価していくことは,火急の課題である。
現実をどう捉えるかは,人それぞれの思い入れや状況によって異なってくるだろうが,情報技術の過剰な氾濫によって実感としての現実が歪められ希薄になっていくことに危機感を抱く人は多いであろう。科学や技術の方法論は,現実のある側面は扱えても,現実感というような,生きもの特有の基本的な側面を扱うことはできない。一般に,技術やその背景にある科学的学問は価値中立を主張するが,実は近代科学は人間の実感の基盤である情念や主観性,価値観などを意識的に無視し排除することによって科学として成立してきた。そして今,われわれはこの極端な科学的思考のグローバル化に対して強力なオルタナティヴ(代替案)を持てずに苦しんでいる。
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